見積もりを取ったら、金額が3倍違っていませんか

業務アプリの開発を何社かに相談したら、見積もりが50万円から300万円までばらついた。どれが妥当なのか比べようがない。こうした相談はとても多く、原因の多くは依頼する側の伝え方がそろっていないことにあります。

口頭で説明すると、会社ごとに聞き取る内容も想定する範囲も変わります。同じ条件で比べるために使うのが、依頼書(RFP:提案依頼書)です。大企業のような厚い資料である必要はなく、数枚にまとまっていれば十分役に立ちます。

依頼書がないときに起きること

  • 会社ごとに前提が違い、見積もりを比べられない
  • 打ち合わせのたびに同じ説明を繰り返す
  • 含まれていると思っていた機能が、見積もりの外だった
  • 社内で誰が何を決めるのかが曖昧なまま進む
  • 開発が始まってから要望が増え、追加費用がかかる

依頼書の役目は、仕様を決めることではなく前提をそろえること

依頼書というと、画面や機能を細かく書き込むものだと思われがちです。しかし中小企業の業務アプリでは、最初から仕様を固めきるのは難しく、書きすぎるとかえって提案の幅を狭めます

依頼書で大事なのは、なぜ作るのか・今どう困っているのか・どこまでを頼みたいのかという前提です。ここがそろっていれば、各社は同じ土俵で提案でき、金額の違いが「作り方の違い」として比べられるようになります。

依頼書に書くのは「前提」、各社が出すのは「作り方」 依頼する側が書く 作る目的と困りごと 今の業務の流れ 頼みたい範囲と使う人数 予算・時期・決める人 開発会社が提案する 画面と機能の案 使う技術と作り方 費用の内訳 進め方と体制

前提がそろうと、提案の違いがそのまま比較の材料になる

依頼書を書くときの5つのポイント

POINT 1

目的は「何を減らしたいか」で書く

「業務を効率化したい」では、提案の方向が定まりません。「月末の集計に3日かかっているのを半日にしたい」のように、減らしたいものを数字で書くと、各社の提案が同じ目標に向かいます。

POINT 2

今の業務の流れを図にして添える

誰が・何を見て・何に書き込んでいるかを、手書きでもよいので流れ図にして添付します。今使っているExcelや紙の様式も付けると、説明の手間が大きく減ります。

POINT 3

「必須」と「あれば嬉しい」を分ける

要望を全部同じ重さで並べると、すべてを含んだ高い見積もりが返ってきます。最初の版で必ず要るものと、後回しにできるものを分けておくと、予算に合わせた提案を受けやすくなります。

POINT 4

予算は幅で伝える

予算を伏せると、各社が想定する規模がばらばらになります。「100〜150万円程度」のように幅で伝えるほうが、現実的な提案が集まります。月額の運用費を含めるかどうかも書いておきます。

POINT 5

運用と保守の条件も書く

作った後の不具合対応、データの保管場所、契約終了後のデータやソースコードの扱いは、後から揉めやすい点です。依頼の段階で希望を書いておくと、提案の中で回答をもらえます。

書きすぎないほうがよいこと

画面の配置やボタンの色、使う技術の指定までは、最初の依頼書には不要です。手段を決めてしまうと、もっと簡単な作り方の提案が出てこなくなるためです。

依頼書に書く8項目と、書いたときの効果

中小企業の業務アプリなら、次の8項目があれば十分です。A4で3〜5枚程度に収まります。

項目 書く内容の例 書いたときの効果
1. 目的集計作業を月3日から半日に◎ 提案の方向がそろう
2. 現状と課題Excelを3人が別々に更新◎ 原因から提案される
3. 業務の流れ受付から請求までの流れ図◎ 説明の手間が減る
4. 範囲必須の機能とあれば嬉しい機能◎ 見積もりの前提がそろう
5. 使う人と端末事務所5人がPC、現場10人がスマホ◎ 画面の作りが決まる
6. 予算初期100〜150万円、月額は別途◎ 規模感が合う
7. 時期来年4月から使い始めたい◎ 段階的な提案が出る
8. 決め方決裁者、比較する観点、回答期限◎ 選考が公平になる

見落とされやすいのが8番目の決め方です。誰が最終的に決めるのか、価格・実績・対応の早さのどれを重く見るのかを書いておくと、各社はそこに向けて提案を作れます。

開発会社そのものの見極め方はアプリ開発会社の選び方で解説しています。依頼書は、その比較を公平に行うための土台にあたります。

依頼書の雛形を一度作っておけば、次に別の業務を外注するときも項目を埋め直すだけで使い回せます。社内に残る資料としても役に立ちます。

依頼書を作って提案を受けるまでの4ステップ

1
現場に
聞き取る
困りごとと
今の流れを集める
2
8項目で
書き出す
A4で3〜5枚に
まとめる
3
同じ内容で
各社に送る
質問への回答も
全社に共有する
4
決めた観点で
比べる
金額だけで
決めない

1社から受けた質問は、全社に共有する

依頼書を送った後に1社から質問が来て答えた場合は、その回答を他の会社にも送ります。1社だけが知っている前提があると、せっかく依頼書でそろえた条件がまた崩れてしまいます。

口頭で相談した場合と、依頼書で相談した場合

口頭で相談した場合
  • 会社ごとに前提が違い、金額を比べられない
  • 同じ説明を何度も繰り返す
  • 必須でない機能まで見積もりに入る
  • 開発が始まってから要望が増える
依頼書で相談した場合
  • 同じ条件で提案を比べられる
  • 説明は依頼書を渡すだけで済む
  • 予算に合わせた段階的な提案が出る
  • 社内で決めるべきことが先に整理される

依頼書は、書いている途中で社内の考えが整理されることにも価値があります。まずは目的と今の困りごとだけでも書き出してみてください。要件の洗い出しには要件チェックリストが使えます。

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