「社内でやれば安いはず。でも人がいない」

業務システムを作ろうと決めたあと、最初に立ちはだかるのが内製か外注かの判断です。 社内にパソコンに強い社員がいると「その人に頼めば安く済むのでは」と考えますし、 逆に誰もいなければ「全部お任せするしかない」と考えます。

どちらの判断も間違いではありませんが、費用だけで決めると高い確率で後悔します。 内製は初期費用が安く見えて人件費と属人化リスクが乗り、 外注は初期費用が明確な代わりに「ちょっとした修正」に時間とお金がかかるからです。

📌 判断を誤ったときによく起きること

  • 詳しい社員に任せたが、本業が回らなくなり途中で止まった
  • 完成したが作った本人しか分からず、退職とともに使えなくなった
  • 外注したが、項目を1つ増やすだけで見積もりと2週間が必要になった
  • 要望を伝えきれず、出来上がったものが現場で使われなかった
  • 安いところに頼んだら、運用開始後に連絡がつかなくなった

内製か外注かは、0か100かではない

まず押さえておきたいのは、この2つが排他的な選択肢ではないという点です。 実際の現場では「設計は一緒に、開発は外注、日々の項目追加は社内」のような分担がよく取られます。 判断すべきは「どちらか」ではなく、どの工程を誰が持つかです。

そのうえで押さえるべきは、システムの費用は作って終わりではないということです。 業務システムは動き出してからのほうが長く、変更の要望も必ず出ます。 初期費用より、変更が発生したときに何日・いくらかかるかのほうが、 長い目で見た満足度を左右します。

工程ごとに「誰が持つか」を決めると現実的になる 業務の整理 設計 開発 運用・改修 全部内製 社内で完結:費用は抑えられるが、担当者ひとりに全部が乗る 全部外注 丸ごと依頼:安心だが、小さな変更にも見積もりと待ち時間が発生する 分担型 整理・設計・開発は外部と一緒に 日々の調整は社内で

最初から分担型を前提にすると、費用と小回りのバランスが取りやすい

この5つを確認すれば、答えはほぼ決まる

POINT 1

その社員は、本業を減らせるか

内製が失敗する最大の理由は、担当者が本業と兼務のまま始めることです。 開発は片手間でできる作業ではありません。 週に何時間その人の時間を空けられるかを先に決められない場合、内製は選ばないほうが安全です。

POINT 2

その人がいなくなっても続けられるか

内製で作ったものは、そのまま属人化しやすい性質を持ちます。 「作った人しか直せない」状態は、Excelマクロの属人化とまったく同じ構造です。 2人目が触れる形で残せるかどうかを、着手前に確認してください。

POINT 3

作りたいものが、どれくらい固まっているか

要件が固まっていれば外注は効率的です。逆に「使いながら決めたい」段階のものを外注すると、 変更のたびに追加費用と待ち時間が発生します。 まだ形が見えていないなら、先に試作で固めてから外注するのが結果的に安く済みます。

POINT 4

変更の頻度はどれくらいか

月に何度も項目や条件が変わる業務なら、社内で手を入れられる形が向いています。 年に数回しか変わらないなら、外注でも困りません。 「完成後に自分たちで変えられる範囲」を契約前に確認しておくと、ここで揉めずに済みます。

POINT 5

止まったときに、誰が責任を持つか

業務システムは止まると業務も止まります。 内製なら社内で対応しますが、担当者が休んでいたら誰も動けません。 外注なら保守契約の範囲と対応時間を確認します。 「誰が、いつまでに、どこまで直すのか」が答えられない体制は、どちらであっても危険です。

💡 迷ったときの目安

①本業を減らせない、②2人目がいない、のどちらかに当てはまるなら外注寄り。 逆に、変更が頻繁で仕様も自分たちで決めたいなら、外部に作ってもらったうえで 社内で調整できる形を条件にするのが現実的です。

費用だけでなく、続けやすさで比べる

観点 内製する 外注する
初期の費用 ◎ 外部支出は少ない △ まとまった開発費が必要
実際のコスト △ 社員の時間が丸ごと乗る ◎ 金額が見えている
完成までの速さ × 兼務だと止まりやすい ◎ 期日を決めて進められる
小さな修正 ◎ その日のうちに直せる △ 依頼と待ち時間が発生
属人化のリスク × 担当者に依存しやすい ◎ 会社対会社で引き継げる
要件が曖昧なとき ◎ 試しながら決められる × 変更のたび費用が増える
止まったときの対応 △ 担当者次第 ◎ 保守契約で決められる

表を見ると分かるとおり、両者は得意な場面がきれいに逆になっています。 だからこそ「どちらが優れているか」ではなく、 自社が今どちらの状況にいるかで選ぶのが正解です。

決める前にやると失敗が減る4ステップ

1
対象業務を
1つに絞る
全社ではなく
困っている1業務から
2
試作で
形を見る
画面があると
要望が具体的になる
3
変更の頻度を
見積もる
運用後に何が
変わりそうか洗い出す
4
工程ごとに
担当を決める
全部か0かではなく
分担で考える

📌 ステップ2を先にやる価値

内製・外注の判断が難しいのは、作るものがまだ具体的でないからです。 試作品を一度見ると「これなら社内で足せる」「ここは任せたい」が自然に分かれます。 判断材料がない状態で決めるより、はるかに確実です。

費用だけで決めた場合と、続けやすさで決めた場合

🟡 目先の費用だけで決めた場合
  • 社内担当の本業が回らず、開発が途中で止まる
  • 完成しても作った本人以外が触れず、退職で使えなくなる
  • 外注先に小さな修正を頼むたび、見積もりと待ち時間が発生する
  • 使われないまま、費用だけが残る
🟢 工程ごとに担当を決めた場合
  • 設計と開発を任せ、社内の負担を業務整理だけに絞れる
  • 項目追加など日常の調整は社内で完結できる
  • 担当者が変わっても、引き継ぎ先が会社として存在する
  • 止まったときの窓口と対応範囲が事前に決まっている

内製と外注の判断は、能力や予算の問題である以上に体制の問題です。 「誰が作るか」ではなく「作ったあと誰が面倒を見るか」から逆算すると、 自社に合う形はかなりはっきりします。

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