同じ取引先なのに、営業の台帳では『山田商事』、経理では『株式会社山田商事』。商品名も担当者ごとに違い、集計のたびに人が読み替える。アプリを作る前に、この共通の情報を誰がどう管理するか決めておくと、入力画面と集計の土台をそろえられます。
マスタは、日々の取引から繰り返し参照する基本情報
この記事では、顧客・商品・担当部署など、複数の記録から共通して参照する基本情報をマスタと呼びます。受注や出荷のたびに顧客名を自由入力する代わりに、登録済みの顧客を選んで記録するイメージです。
| 情報の役割 | 顧客の例 | 商品の例 |
|---|---|---|
| 共通の基本情報 | 顧客コード、正式名称、利用状態 | 商品コード、商品名、単位 |
| 日々の記録 | この顧客から届いた注文 | この商品を何個出荷したか |
名称を一つのファイルに集めるだけでは、重複は防ぎきれません。どれを同じ顧客と判断するか、新規登録の前に何を調べるか、変更できる人は誰かまで決めて、はじめて運用に使える台帳になります。
名前と、同じものを識別するコードを分ける
『株式会社』の有無や、全角・半角の違いだけで別の取引先として登録されると、取引履歴が分かれます。名称が変わっても同じ顧客だと分かるよう、名前とは別の識別コードを持たせる設計が役立ちます。
顧客台帳の記入例(架空)
顧客コード:C-0012/正式名称:株式会社山田商事/読み:ヤマダショウジ/拠点:大阪営業所/状態:利用中/更新担当:営業管理
どの単位を一件とするかも大切です。本社と支店を一つにまとめるのか、請求先ごとに分けるのかは業務によって異なります。会社名が同じだから統合する、と決めず、受注・納品・請求で区別が必要な単位を確認しましょう。
商品なら、品名だけでなく規格や容量、販売単位まで違う場合があります。『同じ名前』と『同じ商品』を混同しないよう、現場で取り違えた事例から識別に必要な項目を決めます。
最初にそろえるのは、識別・状態・更新の項目
| 項目 | 目的 | 決めごとの例 |
|---|---|---|
| 識別コード | 名前が変わっても同じ対象を追う | 重複不可。停止したコードを別の対象へ使い回さない |
| 表示名・正式名称 | 画面表示と帳票で使い分ける | 略称を使える場所を決める |
| 単位・区分 | 集計や入力をそろえる | 個・箱などの意味を固定する |
| 利用状態 | 過去の履歴を残しながら選択を止める | 利用中・停止中を区別する |
| 更新者・更新日時 | 変更の確認先を残す | 変更理由も必要に応じて記録する |
初日から全項目をそろえるより、実際に入力や集計で使うものから始めます。入力されない項目を必須にすると、仮の文字で埋める運用になりかねません。必須にする理由と、未確定の場合の扱いをセットで考えてください。
新規登録・変更・停止の手順を一本にする
- 新規登録前に、コード・名称・読みなどで既存データを探す
- 同じ可能性がある場合は、請求先や拠点など業務上必要な情報で確認する
- 新規登録と重要な変更を確認する担当者を決める
- 使わなくなった顧客や商品は、履歴を調べてから利用停止にする
停止したマスタを過去の伝票ごと削除すると、後日何を取引したか追えなくなるおそれがあります。新しい入力では選べないが、過去の記録からは参照できる、という扱いを検討しましょう。
また、名称や単価を変えたときに、過去の帳票まで新しい内容へ変わってよいとは限りません。取引時点の情報を記録側にも保存するか、変更の適用日を管理するかを、開発前に決めておく必要があります。
アプリ化するなら、選択入力と確認待ちを試す
表のルールを決めても、各部署が別のコピーを使い続ければ差は残ります。共通のマスタから選んで入力する、変更申請を確認待ちにする、誰が変更したかを追う、といった流れを試作で確かめる方法があります。
試作で試したい操作
営業担当が既存顧客を検索する → 見つからなければ追加を申請する → 管理担当が重複を確認する → 利用中として登録し、受注画面から選べるようにする。
画面が作れた段階で、入力速度だけでなく、似た名前がある場合や担当者が不在の場合も試します。すべてを管理担当一人に集めて滞らせないよう、確認が必要な項目と、担当部署で直せる項目を分ける考え方もあります。
まずは一種類のマスタから始める
最初の対象は、重複で困っている顧客台帳や、単位の取り違えが起きる商品台帳など、一種類で構いません。現在のデータを保存し、重複の候補を洗い出し、統合するものと残すものを担当者が確認します。その後、新しい登録・変更の手順を小さい範囲で試します。
マスタ管理は、表記を一度きれいにする作業ではなく、使いながら整った状態を維持する仕事です。SHISAKUBAに相談する場合は、実際に困った重複の例と、そのあとに発生した手直しを持ち寄ると、必要な入力画面や確認手順を具体的に考えられます。
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