在庫表では残っているのに、出せる在庫がない
お客さまから注文の電話があり、在庫表を見ると30個ある。すぐ出せますと答えたあとで、倉庫から「その30個は昨日別のお客さまに約束した分です」と言われる。営業が二人いると、同じ在庫をそれぞれのお客さまに約束してしまうこともあります。
この記事では、在庫引当の意味と、現在庫・引当済・有効在庫の関係、そして同じ在庫を二重に約束しないための仕組みの作り方を整理します。呼び方や計算の細かいところは会社や業種で違うため、ここでは一般的な考え方として紹介します。
在庫引当がないと起きやすいこと
- 在庫表の数をそのまま「出せる数」だと思ってしまう
- 同じ在庫を二人の営業が別々のお客さまに約束する
- 出荷の直前になって足りないことに気づく
- 納期の回答が、倉庫に確認するまでできない
在庫を「この注文の分」として取り置くこと
在庫引当(ひきあて)は、受注や製造の指示が入ったときに、手元の在庫のうち必要な数を「この注文の分」として確保しておくことです。実物はまだ棚にあっても、引き当てた分はほかの注文には使えないものとして扱います。
在庫引当の考え方
受注したものの、まだ出荷していない注文の残りは受注残と呼びます。受注残に対して在庫が引き当たっているかどうかを見ると、どの注文が今すぐ出せて、どの注文が入荷待ちなのかがわかります。
現在庫から引当済を引いた数が、約束できる数
いちばん簡単な形は、有効在庫 = 現在庫 − 引当済です。近いうちに入荷する予定の数も含めて考える場合は、有効在庫 = 現在庫 + 入荷予定 − 引当済とします。どちらで答えるかは、お客さまに伝える納期の考え方に合わせて決めます。
| 項目 | 数 | 説明 |
|---|---|---|
| 現在庫 | 30個 | 棚に実際にある数 |
| 引当済 | 20個 | A社(10個)とB社(10個)に約束済み |
| 入荷予定 | 50個 | 来週の水曜日に届く予定 |
| 今すぐ約束できる数 | 10個 | 30 − 20 |
| 来週以降なら約束できる数 | 60個 | 30 + 50 − 20 |
新しい注文が15個なら、今すぐ出せるのは10個で、残りの5個は来週の入荷後になる、と答えられます。在庫表に「現在庫」しかないと、この回答はできません。
引当の記録が、在庫表と別の場所にある
| 項目 | 紙・ホワイトボード | Excel | アプリ(データ) |
|---|---|---|---|
| 引当の記録 | 担当者のメモ | 在庫表とは別のシート | 受注を入れると同時に引当 |
| 同時の更新 | できない | 上書きや競合が起きる | 二人が同時に入れても数がずれない |
| 有効在庫 | その都度計算 | 数式が壊れやすい | 画面にいつも表示 |
| 引当の解除 | 消し忘れが起きる | 消し忘れが起きる | キャンセルや出荷で自動で戻る |
Excelで引当を管理するときにいちばん困るのは、キャンセルになった注文の引当を外し忘れることです。引当が残ったままだと、在庫はあるのに「ない」と答えてしまい、売れるはずのものを逃します。
受注と同時に引き当てる仕組みにする4ステップ
いつ引き当てるかを決める
受注の時点で引き当てると在庫が固定されやすく、出荷の直前だと二重の約束が起きやすくなります。納期や在庫の回転に合わせて決めます。
先に約束した注文を優先する
在庫が足りないときにどの注文から引き当てるか(受注の早い順、納期の早い順など)を決めておくと、営業どうしで揉めにくくなります。
電話を受けたその場で、出せる数と納期を答えられる
- 在庫を確かめるたびに倉庫へ電話する
- 同じ在庫を二人の営業が約束してしまう
- キャンセルの引当が残り、売り逃しが出る
- 受注画面で、今すぐ出せる数と入荷後の数がわかる
- 受注を入れた時点で在庫が確保され、二重の約束が起きない
- 出荷やキャンセルで引当が自動で外れる
在庫の数そのものが合っていないと、引当も正しくなりません。棚の数と表の数を合わせる作業は棚卸しの効率化で扱っています。
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