「その材料、どの製品に使いましたか?」に答えられるか

仕入先から「先月納めた材料に不具合があった」と連絡が来る。その材料を使った製品はどれで、どこへ出荷したのか。製造記録の紙をめくり、出荷伝票と突き合わせ、半日かかってもはっきりしない。製造や加工の現場では、こうした場面が少なくありません。

この記事では、ロット管理とトレーサビリティの意味、記録しておくべき項目、紙やExcelで管理したときにつながりが切れる理由と、さかのぼって調べられる仕組みを作る手順を整理します。

ロット管理でよくある困りごと

  • 製造記録・検査記録・出荷記録が別々の紙やファイルにある
  • どの材料ロットを使ったかを書き忘れる
  • 不具合が出たとき、影響する出荷先を絞り込めない
  • 結局「念のため全部」回収・確認することになる

ロットは「同じ条件で作ったまとまり」、トレーサビリティは「たどれること」

ロットとは、同じ材料・同じ日・同じ設備など、同じ条件で作った製品のまとまりのことです。ロットごとに番号(ロット番号)を付けて記録することを、ロット管理と呼びます。

トレーサビリティ(追跡可能性)は、製品がどの材料から、いつ・どこで作られ、どこへ渡ったかを記録でたどれる状態を指します。ロット番号は、そのたどる道筋をつなぐ「鍵」の役割をします。

ロット番号でつながる記録(イメージ) 材料の受け入れ 材料ロット M-0912 仕入先・入荷日 製造 製品ロット 1015-02 使った材料ロット 検査 1015-02 合格 測定値・検査者 出荷 A社へ 300個 出荷日・数量 前へたどる:「この製品はどの材料・どの日の製造か」(遡及) 後ろへたどる:「この材料を使った製品は、どこへ出荷したか」(追跡)

材料・製造・検査・出荷の記録を、ロット番号でつないでおく

たどり方には2つの向きがあります。製品から材料や工程へさかのぼる向きと、材料から出荷先へ追いかける向きです。不具合のときに必要なのは多くの場合、両方です。なお、食品や医薬品など、業種によっては法令や取引先の基準で記録が求められることがあります。自社に当てはまる決まりは、所管の官公庁や取引先の基準で確認してください。

ロット管理で最低限つないでおく項目

全部を細かく記録しようとすると、現場が回らなくなります。まずは次の項目が「ロット番号でつながっているか」を確認するところから始めます。

工程ごとに残す主な項目

  • 受け入れ:材料名・材料ロット番号・仕入先・入荷日・数量
  • 製造:製品ロット番号・製造日・使った材料のロット番号・設備・担当者
  • 検査:製品ロット番号・検査日・結果・検査者
  • 出荷:製品ロット番号・出荷先・出荷日・数量

ポイントは、製造の記録に「使った材料のロット番号」を残すことと、出荷の記録に「出荷した製品のロット番号」を残すことです。この2つが抜けると、記録はそれぞれ揃っていても、あとからつながりません。

検査の記録の残し方は検査成績書とは?書く項目と、紙・Excelからの切り替え方、製造の指示の出し方は製造指示書とは?で詳しく紹介しています。

紙・Excel・アプリでロットをたどると

項目紙Excelアプリ(データ)
記録のつながり書類ごとに別々シートやファイルごとに別々ロット番号で自動的につながる
材料ロットの記入書き忘れやすい手入力で打ち間違いが起きる一覧から選ぶ・バーコードで読む
さかのぼる調査紙をめくって突き合わせ複数ファイルを検索して突き合わせロット番号を入れると一覧で出る
出荷先の絞り込み伝票を1枚ずつ確認シート間で照合が必要影響する出荷先をすぐ出せる
現場の負担書く量が多い現場にパソコンが必要タブレットで選ぶだけにできる

Excelでも、1つのシートでロット番号を揃えて管理していれば、ある程度はたどれます。困るのは、製造・検査・出荷のファイルが別々で、番号の書き方も人によって違うときです。番号の付け方を決め、記録を1か所に集めることが先決です。

さかのぼって調べられる仕組みを作る4ステップ

1
番号の付け方を決める
日付+連番など、誰が付けても同じ形に
▶
2
つなぐ項目を決める
使った材料ロット・出荷ロットを必須に
▶
3
現場で選んで入力
手書きでなく、一覧やバーコードで選ぶ
▶
4
たどる画面を作る
ロット番号から前後の記録を一覧表示
ポイント 1

番号は「人が読める形」にする

日付や設備がわかる番号にしておくと、現場でも番号の意味がわかり、書き間違いに気づきやすくなります。

ポイント 2

材料ロットは手で書かせない

材料ロットの書き忘れ・書き間違いが、つながりが切れるいちばんの原因です。入荷済みの材料ロットから選ぶ画面にすると、入力が速く正確になります。

ポイント 3

不具合が出たときの調べ方を先に試す

仕組みができたら、過去のロットを1つ選んで、材料から出荷先まで実際にたどってみます。途中で止まった場所が、記録の抜けている場所です。

ロットがつながると、何が変わるか

記録がばらばらの場合
  • 材料・製造・検査・出荷の書類を突き合わせて調べる
  • 材料ロットの書き忘れで、つながりが途中で切れる
  • 影響する出荷先を絞れず、範囲を広げて確認する
  • 調べ終わるまでに半日〜数日かかる
ロット番号でつないだ場合
  • ロット番号を入れると、前後の記録が一覧で出る
  • 材料ロットは一覧から選ぶので抜けが起きにくい
  • 影響する出荷先と数量をすぐに出せる
  • 取引先への回答を早く、根拠付きで返せる

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