製造指示書に何を書けばいいのか、社内で決まっていますか
製造指示書は、「何を・いくつ・いつまでに・どうやって作るか」を現場に伝える書類です。受注が入ったら事務所で作成し、製造現場に渡して、その内容どおりに作ってもらうための起点になります。
ところが中小の製造業では、様式が担当者ごとに違っていたり、ベテランの頭の中にある前提が書かれていなかったりして、同じ製品でも指示書によって書いてあることが違うという状態が珍しくありません。まずは名前の整理と、書くべき項目の整理から始めます。
製造指示書まわりでよく聞く悩み
- 「製造指示書」「作業指示書」「製造指図書」の違いがはっきりしない
- 担当者によって書く項目がばらばらで、抜けがある
- 図面や手順書の版が古いまま指示書に添付されている
- 指示書の内容と、実際に作った数・使った材料が照合できない
- 急ぎの変更が口頭だけで伝わり、指示書に残らない
製造指示書・作業指示書・製造指図書の違い
3つとも「作るための指示」を書いた書類で、会社によって呼び方が入れ替わることも多い言葉です。ただ、目的の重心で分けると整理しやすくなります。
製造指示書は、ある製品を何個・いつまでに作るかを決めて現場に渡す書類で、生産の単位(ロットや受注)ごとに発行します。作業指示書は、その中の個々の作業を「どの手順で、何に気をつけて行うか」まで書いたもので、工程や作業者の単位に近くなります。
製造指図書は、主に原価計算の場面で使われる言葉です。指図書ごとに材料費や作業時間を集計して、その製品にいくらかかったかを出すための単位として扱われます。現場への指示と原価の集計を、同じ1枚で兼ねている会社も少なくありません。
呼び方は会社ごとに違うので、まず自社で「どの単位で何を書くか」を決めるのが先
| 書類 | 何のための書類か | 発行する単位 | 主に使う人 |
|---|---|---|---|
| 製造指示書 | 何を・いくつ・いつまでに作るかを現場に伝える | 受注・ロットごと | 生産管理・製造現場 |
| 作業指示書 | 個々の作業の手順と注意点を伝える | 工程・作業者ごと | 作業者 |
| 製造指図書 | 材料費や作業時間を集計し、原価を出す | 製品・指図番号ごと | 経理・原価管理 |
| 製作指示書 | 一品ものの仕様を受注ごとに伝える | 受注ごと | 受注生産の現場 |
それぞれの書類は、別の記事で詳しく解説しています。作業指示書とは、製造指図書とは、製作指示書とはもあわせてご覧ください。なお「指図書」は「さしずしょ」と読みます。生産指示書・製造指令書などの呼び方も、多くの場合は製造指示書とほぼ同じ意味で使われています。
大事なのは言葉を正しく使い分けることより、自社ではどの単位で指示を出し、どこに実績を返すかを決めておくことです。呼び方が混ざっていても、その取り決めがあれば現場は困りません。
製造指示書に最低限書いておきたい5つの項目
品番・品名と版数
何を作るかは品番で特定し、あわせて図面や仕様の版数を書きます。版数がないと、改訂前の図面で作ってしまう事故が起きます。
数量と納期(着手日・完了予定日)
作る数と、いつまでに仕上げるかを書きます。受注の納期だけでなく、その工程をいつ始めていつ終えるかまで書くと、前後の工程との調整がしやすくなります。
工程と使用する設備
どの順番でどの工程を通すか、どの機械やラインを使うかを書きます。工程ごとに担当と完了のチェック欄を設けると、今どこまで進んでいるかが指示書から読めるようになります。
使用する材料・部品と数量
材料の品番と必要数を書きます。これがあると、倉庫からの出庫や在庫の引き当てが指示書と連動し、使った材料と作った数を後で照合できます。
注意事項と検査の基準
過去に不良が出た箇所、取引先ごとの特別な指定、検査で見る項目と基準を書きます。ベテランが口頭で伝えていたことを、ここに書き起こしていきます。
指示書は「実績を書き戻す欄」まで含めて設計する
指示を出す欄だけの指示書は、作り終えたら役目が終わってしまいます。実際に作った数・不良数・使った材料・作業時間を書き戻す欄を同じ書類に持たせると、原価の把握や次回の段取りに使える記録になります。
製造指示書の記入例
5つの項目を1枚にまとめると、たとえば次のようになります。品番や数値は説明のための架空の例です。自社の様式を作るときの、項目の並べ方の参考にしてください。
| 項目 | 記入例 | 書くときのポイント |
|---|---|---|
| 指示番号 | MO-2026-1024 | 実績や原価を後でひも付ける番号にする |
| 品番・品名・版数 | B-3150 取付ブラケット(図面 Rev.C) | 図面の版数を必ず書く |
| 数量 | 500個(予備10個を含む) | 予備を含むかどうかを明記する |
| 着手日・完了予定日 | 10月27日 着手/10月30日 完了 | 受注の納期とは別に、工程の日付を書く |
| 工程・設備 | 切断(シャーリング)→ 曲げ(ベンダー2号機)→ 塗装(外注) | 工程ごとに担当と完了チェック欄を設ける |
| 材料・数量 | SPCC t2.0 定尺 12枚 | 出庫と在庫の引き当てに使える単位で書く |
| 注意事項・検査 | 曲げ角度 90°±0.5°、穴位置は初品で全数確認 | 過去の不良やクレームをここに足していく |
| 実績(書き戻し) | 完成 497個/不良 3個/作業 11.5時間 | 作り終えた現場が記入する |
最後の「実績」の欄まで1枚にまとめておくと、指示と結果を並べて確かめられます。紙やExcelのテンプレートを作るときも、まずはこの並びで項目を固定するところから始めると抜けが減ります。
手書き・Excel・システムの製造指示書を比べる
製造指示書の作り方は、大きく3つに分かれます。どれが正解というより、受注の件数と、変更の多さで向き不向きが決まります。
| 観点 | 手書きの様式 | Excelの様式 | 業務アプリ・システム |
|---|---|---|---|
| 作成の手間 | × 毎回書き写す | △ コピーして修正 | ◎ 受注から自動作成 |
| 記載の抜け | × 人による | △ 様式で多少防げる | ◎ 必須項目で止める |
| 変更の反映 | × 書き直しと差し替え | △ 印刷し直し | ◎ 最新版が見える |
| 実績との照合 | × 別の紙を突き合わせ | △ 集計が手作業 | ◎ 指示と実績が一体 |
件数が少なく、同じ製品の繰り返しが多いうちはExcelの様式で十分回ります。まずは項目を固定した様式を1つ作り、全員がそれを使うだけでも抜けは大きく減ります。
一方で、受注が増えて変更が頻繁に入るようになると、印刷した指示書と最新の内容がずれ始めます。このずれが出てきたら、指示書を電子化する時期です。進め方は製造指示書・作業指示書を電子化する方法で詳しく解説しています。
自社の製造指示書を整える4ステップ
いきなり新しい様式を作るのではなく、今ある指示書を集めるところから始めると、現場が必要としている項目が見えてきます。
集める
様式を並べる
そろえる
分ける
加える
書き戻す
試して直す
聞き取る
注意事項は、不良が出るたびに書き足す
注意事項の欄は、最初から完璧に埋めようとしなくて構いません。不良やクレームが出たときに、その原因をその製品の注意事項に1行足す運用にすると、指示書が少しずつ現場の知恵を蓄える場所になります。
様式がばらばらな場合と、項目をそろえた場合
- 担当者によって書く内容が違う
- 古い版の図面で作ってしまう
- 作った数と材料が照合できない
- 注意点がベテランの頭の中にある
- 誰が書いても同じ項目が埋まる
- 版数で最新の図面を確認できる
- 指示と実績を並べて見られる
- 注意点が製品ごとに残っていく
製造指示書は、受注と現場、そして原価の把握をつなぐ書類です。呼び方にこだわるより、何を書き、どこに実績を返すかを決めることが先です。今の指示書を何枚か並べて、項目の違いを確かめるところから始めてください。
製造指示書についてよくある質問
製造指示書は誰が作りますか?
多くの会社では、受注を受けた生産管理や工務の担当者が作成し、製造現場に渡します。小さな会社では、営業や工場長が兼ねていることもあります。大事なのは誰が作っても同じ項目が埋まる様式にしておくことです。
製造指示書と製造指図書は、1枚にまとめてもよいですか?
まとめている会社は少なくありません。現場への指示の欄と、材料・時間を書き戻す欄を同じ書類に持たせれば、そのまま原価の集計にも使えます。分けるかどうかは、原価を製品ごとにどこまで細かく見たいかで決めます。
指示の内容が途中で変わったときはどうしますか?
口頭で伝えるだけにせず、指示書を差し替えるか、変更内容と日時を書き足すことを決めておきます。紙の場合は古い指示書の回収まで決めておかないと、現場に新旧が混ざります。変更が多い場合は、最新の内容が常に見られる電子化を検討する時期です。
テンプレートは、どこから作ればよいですか?
今使っている指示書を何枚か集め、共通して書かれている項目を並べるところから始めます。上の記入例の8項目を土台にして、自社の工程や検査に合わせて足し引きすると、現場で使われる様式になりやすくなります。
製造指示書と実績の記録を、1つの画面にまとめられます
受注から指示書を作り、現場で進捗と実績を入力する形を、自社の工程に合わせて試作します。
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