どの工程で詰まっているのか、感覚でしかわからない
ラインの途中にいつも仕掛品がたまる場所がある。忙しい工程と手が空いている工程があるのはわかっているが、どのくらい差があるのかは誰も数字で説明できない。増産の話が出ても、今のラインで間に合うのか判断できない。
この記事では、タクトタイムの意味と計算方法、サイクルタイムとの違い、そして工程ごとの作業時間と比べてラインを見直す使い方を整理します。
タクトタイムを使うと答えやすくなる問い
- 今の人数とラインで、注文の数を作りきれるか
- どの工程が全体の速さを決めているか
- 増産したときに、どこから手を入れるべきか
- 人を何人にすれば、ちょうどよく回るか
注文の数を作りきるために、1個あたりにかけられる時間
タクトタイムは、決められた稼働時間の中で必要な数を作りきるために、1個あたりにかけてよい時間です。お客さまが求める数から決まる時間なので、ラインの能力とは関係なく計算できます。
計算式は、タクトタイム = 1日の稼働時間 ÷ 1日に必要な数です。たとえば、休憩を除いた稼働時間が7時間20分(440分=26,400秒)で、1日に必要な数が440個なら、26,400秒 ÷ 440個 = 60秒になります。1個を60秒より速く作れれば、注文の数に間に合う計算です。
タクトタイムとサイクルタイムの関係
サイクルタイム・リードタイムとの違い
| 言葉 | 意味 | 決まり方 |
|---|---|---|
| タクトタイム | 1個にかけてよい時間 | 稼働時間 ÷ 必要な数(注文から決まる) |
| サイクルタイム | 1つの工程で1個を作るのに実際にかかる時間 | 現場で測る(ラインの実力) |
| リードタイム | 材料の投入から完成まで(または受注から納品まで)にかかる時間 | 待ち時間や運ぶ時間も含む |
サイクルタイムがタクトタイムより長い工程があると、その工程の前に仕掛品がたまり、ライン全体が注文に追いつきません。この工程をボトルネックと呼びます。サイクルタイムの考え方は設備稼働率とOEEの性能の計算にも出てきます。
工程ごとの時間を並べて、タクトタイムの線と比べる
工程ごとのサイクルタイムを棒グラフのように並べ、タクトタイムの位置に線を引くと、どの工程が線を超えているかがひと目でわかります。
| 工程 | サイクルタイム | タクトタイム(60秒)との差 | 考えられる手 |
|---|---|---|---|
| 1. 切断 | 45秒 | 15秒の余裕 | ほかの工程の作業を一部受け持てる |
| 2. 溶接 | 72秒 | 12秒超えている | 作業を分ける・治具を見直す・人を足す |
| 3. 組立 | 58秒 | 2秒の余裕 | ばらつきが大きければ要注意 |
| 4. 検査 | 40秒 | 20秒の余裕 | 検査の一部を前の工程に入れる |
この例では溶接がボトルネックです。超えている工程の作業を余裕のある工程に移したり、段取り替えの時間を減らしたりして、すべての工程をタクトタイムの内側に収めることを目指します。必要な人数の目安は、全工程の作業時間の合計 ÷ タクトタイムで出せます(この例では215秒 ÷ 60秒で約3.6人)。
時間の記録を、比べられるデータにする4ステップ
1回だけで決めない
サイクルタイムは人や時間帯でばらつきます。何回か測った平均と、いちばん長かった時間の両方を見ます。
必要な数が変われば線も動く
注文が増えればタクトタイムは短くなります。計画が変わるたびに計算し直せるようにしておくと、増産の判断がしやすくなります。
どこを直せばよいかが、数字で説明できる
- 詰まっている工程が感覚でしかわからない
- 測った時間が紙のまま残っていない
- 増産できるかを経験で判断する
- タクトタイムを超えている工程が一覧でわかる
- 作業を変える前と後の時間を比べられる
- 必要な数を入れると、足りない工程と人数の目安が出る
ラインの速さを決める工程が見つかったら、その工程の作業手順を作業標準書にまとめ直すと、人による時間のばらつきも減らせます。
工程ごとの作業時間を、記録して比べられる形にしませんか?
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